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家族信託という選択(8)

2020年12月7日

1  家族信託のはたらき

既に述べたとおり、家族信託には「生前の財産管理機能」と「相続後の遺産分割機能」が兼ね備わっています。裁判所を介さないため、家族構成や財産状態、将来予測等に合わせた柔軟な対応ができることも大きな特色です。家族信託を利用することによって、遺言や後見制度の活用だけではできなかった様々なことが可能となり、利用者の選択肢は大きく広がります。

 

2  家族信託を使わない方がよい場面

家族信託は、委託者と受託者の2人だけ行うことが可能です。例えば、家族が父、母、長女、長男、次男の場合で、父(委託者兼受益者)と家業を手伝っている長男(受託者)が他の家族に内緒で、家族信託の契約を結ぶことも可能です。つまり、他の家族が全く知らないところで、特定の者が家族の大切な財産を管理し、相続後の行き先まで決めることもできます。後に他の家族がこの事実を知った場合、どう思うでしょうか?誰もよい気持ちはしないでしょうし、家族崩壊にもつながりかねません。

本来、家族信託は柔軟な財産管理と円満な相続を目指すものですが、このようになってしまえば元も子もありません。したがって、家族信託を行う場合、家族で納得するまで話し合い、後に禍根を残さないようにすることが大切です。他の家族に説明できないような場合は家族信託を行わず、柔軟性にやや欠けるものの、裁判所が介入するため中立的な後見制度を活用する方が妥当と考えます。

(こちらとほぼ同様の内容はOITA CITY PRESS 2020年12月号に掲載されています)

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