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家族信託という選択(7)

2020年11月2日

【家族信託を利用した事業承継②/会社の株価が安い場合】

 

1.相談内容

私(相談者、創業者で会社の全株式を所有)は高齢のため、将来は長男に会社の経営を任せようと考えています。

過去の一時期に経営状態が悪かったことや、ここ数年、多額の設備投資に伴い銀行から借り入れがかさんだことから、会社の株価は安い状態です。

したがって、株価が安い今の段階で私から長男にすべての株式を生前贈与し、一気に相続対策を行いたいと考えています。

しかし、社員や得意先からの信頼がまだ足りないため、現段階では長男に会社経営を任せられる状態ではありません。そんな中、私の株式をすべて長男が取得すると、経営権は長男が握ることになるため、私の意向が反映されず、最悪の場合、経営方針の相違から親子が反目し、会社自体が立ち行かなくなるのではないかと心配しています。

 

2.家族信託を使った事業承継対策

①株価評価が低い今のタイミングで長男に株式の生前贈与を行い、同時に家族信託を行うことにより、生前贈与で株式の経済的価値は長男に移すものの(委託者兼受益者:長男)、議決権行使は父親が行い(受託者:父)、実質的経営権は継続して父親が握るという形をとることができます。

②委託者兼受託者を父、受益者を長男とする家族信託(自己信託)のスキームを使うことにより、①と同様、株式の経済的価値は長男に移すものの、議決権行使は父親が継続して行うことが可能となります。

(こちらとほぼ同様の内容はOITA CITY PRESS 2020年11月号に掲載されています)

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