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家族信託という選択(6)

2020年10月2日

【家族信託を利用した事業承継①/会社の株価が高い場合】

1.相談内容 

父(創業者で会社の全株式を所有)は75歳になるので、そろそろ引退し、長男に会社の経営を任せようと考えています。しかし、会社の株価が高く長男に株式を譲渡できない状態にあります。 

 

2.何もしなかった場合 

父が認知症などで判断能力が欠如すると、議決権行使をすることができず、会社の経営はストップしてしまいます。そのため、議決権行使は成年後見人が行うこととなりますが、経営の専門家ではない弁護士や司法書士等の第三者が議決権行使等を行う可能性があり、柔軟かつ積極的な会社経営ができなくなるリスクがあります。 

 

3.成年後見制度を使った場合 

  任意後見を活用すれば、あらかじめ長男を任意後見人に指定することができますが、認知症発症等による任意後見発効後は、任意後見監督人が選任される可能性が高いため、任意後見監督人に対する定期的な報告が必要となり、柔軟かつ積極的な会社経営はできなくなるリスクがあります。 

 

4.家族信託を使った場合 

父を委託者兼受益者、長男を受託者とする信託契約を締結します。父に認知症が発症しても、自社株式の議決権行使は後継者である受託者(長男)が行うことができるので、父に万一のことがあっても会社の経営は長男が行うことができ、同時に受託者である長男は相続時に株価評価が下がるような継続的相続対策(例えば借入による大規模設備投資等)を講じることができます。 

 

(こちらとほぼ同様の内容はOITA CITY PRESS 2020年10月号に掲載されています)

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