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遺留分の支払いと不動産の二重課税について

2020年1月6日

令和元年7月1日から、遺留分の支払いとして、金銭にかわり相続財産である不動産を分与した場合、その分与に対しても課税されることになりました。これは、民法が改正され、遺留分の支払いは金銭でのみ行うことになったためです。

1.遺留分とは

遺留分とは一定の範囲の相続人に認められる最低限の遺産取得分のことです。例えば、父親が死亡し、子ども2人(兄と弟)のみが相続人の場合、本来なら、兄と弟はそれぞれ1/2の相続分があります。しかし、「自分の財産(1億円のアパートしかないとします)はすべて兄に渡す」という内容の父親の遺言があり、遺言通りに遺産分割を行えば、弟は全く遺産をもらえなくなります。このような不公平を避けるため、相続財産の一定割合については、遺留分という最低限保証される財産を請求する権利が認められています。この例では弟の遺留分は相続財産の1/4、つまり2,500万円となります。

2.遺留分を不動産で支払うと所得税も課税される

民法改正前は、遺留分の目的物が特定されていたら、現物返還が原則でした。上記の例で、弟から遺留分の請求があった場合、兄は弟にアパートの持ち分1/4を渡し、兄が7,500万円、弟が2,500万円に応じた相続税を支払えばそれで終わりでした。しかし今回の改正で、兄が金銭のかわりに不動産の持ち分1/4を渡すこと(このことについての弟の同意は必要)は、金銭2,500万円の代物弁済とみなされ、不動産の譲渡所得税も支払わなくてはならなくなりました。つまり、改正前と異なり、相続税に加え、アパートの持ち分を2,500万円で売った場合と同じ所得税も兄が支払わなければならず、二重に課税されるということです。

(こちらの内容はOITA CITY PRESS 2020年1月号に掲載されています)

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