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身近にできる不動産を利用した相続対策

2019年8月8日

1.相続時精算課税

20歳以上の子(孫)が60歳以上の父母(祖父母)から受ける贈与について2,500万円までが非課税になり(住宅取得資金の場合、贈与者の年齢制限はない)、それを超えた分は一律20%の贈与税が課税される制度です。その後、贈与者の相続発生時に、贈与した財産(贈与時の価格)を加算して相続税を計算します。この制度を使うメリットとして、①暦年贈与(年間110万円以下の贈与は非課税であることを利用した相続税対策)と比較して、短期間で多額の財産を相続人に移転することができること、②生前に特定の物(不動産等)を特定の相手に移転ができること、③相続税を計算するときは贈与時の時価が反映されるため、贈与時に比べ相続時に土地が値上りしていた場合、節税効果があること等があげられます。デメリットとしては、①一度適用すると暦年贈与への変更ができなくなること、②相続の時には、既に支払っている贈与税と相続税が相殺されるため、抜本的な節税対策にはならないこと等があげられます。

2.贈与税の配偶者控除

贈与を受けた日において婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用不動産又は居住用不動産の取得資金の贈与を受けた場合において、2,000万円までの部分について贈与税が非課税になる制度です。この制度を使うメリットとして、①贈与税が軽減できること、②生前に特定の相手を対象に居住用不動産の移転ができること、③他の生前贈与財産と異なり相続税の計算で相続財産に加算されないこと等があげられます。デメリットして、相続税にも贈与税と同様の趣旨で配偶者に対する手厚い優遇措置(自宅の土地の価格を最大80%減額できる特例等)があり、抜本的な節税対策にはならないこと等があげられます。

3.まとめ

相続財産の多寡にかかわらず、遺産分割時における相続人間の争いは、数多く発生しています。上記1・2の方法は、生前に特定の相手に非課税もしくは低額の税金で特定の不動産を譲渡できることから、相続発生後の相続人間の無用の争いを回避する手段として極めて有効と考えます。

(こちらの内容はOITA CITY PRESS 2019年8月号に掲載されています)

 

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